天使

もしもし、運命の人ですか。 (ダ・ヴィンチ・ブックス) にょっ記 手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)
言葉にできそうでできない気持ちをどう表現したらいいかがわからない。小説を書いたけれど全然だめだった。詩を書いたけれどそれもだめだった。芝居をしていても、踊っていても、そんなところまで辿り着くことができない。聞き手に何も伝えることができない。もしかしたら、ひとの気持ちを表現するにはまず気持ちを受けとめるこころ――私には感受性がすこしばかり足りないのかもしれない。いつも醒めた目で世の中の事象を見つめている私が話し手になろうなんて、ばかげた話だ。
けれどもこう思いたい。穂村弘は、きっと私の運命の人だ。醒めた目の私はそれでも手紙魔まみに憧れて、自分も手紙魔まみになりたくて、恋をしたキスもしたセックスもした、けれどなれなかった。感受性のねじが二三本はずれている私に穂村弘はなにも言ってくれない。己のことしか言ってくれない。そりゃあそうなんだけど。だから穂村弘は私の運命の人で、でも私は手紙魔まみじゃない。