第九話

「赤い靴」というバレエ映画がありますな。見たことないけど。


トウシューズといばら。示唆的にも程があります。それにしても今回のタイトルは「黒い靴」だけど、単純に考えるとプリンセスクレールのこと。って、トウシューズの周りの影をよく見たら…!
おお、展覧会の絵がよく使われてるっていうのは前にも書いたけど、プロムナード初出はこの回かあ。前回のふりかえりにて流れます。そして今日の副題は「Bilder einer Ausstellung: Alten Schloß」――「展覧会の絵」古城。私のいっとう好きな曲ですよ。キャッキャウフフ。キャラクターもみんな思い悩んでる感じ。
心を取り戻していく順番とストーリー進行がマッチしてて、無理なく無駄ない展開。いやあ、ほれぼれします。「知りたい」という気持ちを取り戻したみゅうとが、るうに訊いてはいけないことを訊いてしまう。今まで当然のこととして受け入れていたこと、それが崩れていく過程。「心を取り戻す」という一般的に考えればポジティブなことが、この関係ではネガティブなことに他ならないのです。鴉がたくさん。鴉の瞳とるうの瞳の色は、同じ色です。
あれれ? 本屋のおっちゃんとドロッセルマイヤーの声が一緒っぽい。「王子と鴉」を読みに来たふぁきあの前にもエデル登場。物語の次を指し示し、運命を告げ、また去っていく。やっぱり操り人形でした。
「最初にポワントで踊った人って、すごいと思うなぁ。思わない?」最初にポワント(トウシューズ)で踊った人はマリー・タリオーニです。白い衣裳を付けた妖精がたくさん出てきて踊るバレエをバレエ・ブランと呼ぶのですが(「ジゼル」第二幕とか「ラ・シルフィード」「レ・シルフィード」など)、そこで非人間的な軽さや幻想的な雰囲気を表現するために考案されたのが、爪先立ちで踊ること。タリオーニはポワントを履いて「ラ・シルフィード」を踊り、見事その名を後世に残すこととなったのでした。ポワントが本当に食べられちゃったかどうかは知らないけどね。あと、トウシューズの「トウ」は仏語で「爪先」の意。
猫先生とヤギ子先生の会話が、るうとふぁきあに絡んでいくこの演出というか脚本が神掛かりすぎてどうにもこうにも。
「恋にプリンセスは二人もいらない」あうあうあう…。るうの元にもドロッセルマイヤーの歯車が。あひるのペンダントは美術科の女の子に反応。「るうさんしか描きたくないの」と思い悩む彼女に秘められた、みゅうとの心の欠片は「一途に思う」心。プリンセスクレールは誰からも必要とされない、ただの悪役なのかしら?


しかしクレールの変身シーンは性的すぎます。

「愛する心のない王子に、死を恐れる騎士、覚悟のない悪役に、愛を告げられないプリンセス。」