杉井ギサブロー版『銀河鉄道の夜』を劇場で観る

小さい頃、ビデオで繰り返し観た記憶がある。暗く、不気味で、けれども綺麗な作品だった。1985年と生まれる前に公開されたアニメーションだが、京都みなみ会館で1週間限定で上映されるのを知っていそいそと出掛けてきた。


はてな記法では時間指定ができないので、3分27秒からの「別離のテーマ」を聴きながらどうぞ。

「あ、あすこ石炭袋だよ。そらの孔だよ。」カムパネルラが少しそっちを避けるようにしながら天の川のひととこを指さしました。ジョバンニはそっちを見てまるでぎくっとしてしまいました。天の川の一とこに大きなまっくらな孔がどほんとあいているのです。その底がどれほど深いかその奥に何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなんにも見えずただ眼がしんしんと痛むのでした。ジョバンニが云いました。
「僕もうあんな大きな暗の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」

図書カード:銀河鉄道の夜

サザンクロスを過ぎ、ふたりきりで座って語り合っていたら、突然カムパネルラが消え、後ろの車輌へ追いかけていくジョバンニ、という緩急あるシーンがとても切ない。ごうんごうんと石炭袋へ吸い込まれるように走る列車には暗いイメージが付き纏う。「どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう」とジョバンニは言うけれど、石炭袋の向こうは真っ暗で何も見えない。ふたりの旅は唐突に終わる。
観ている間、ずっと孤独を感じる映画だと思う。けれども、燃える蠍が体現したような「ほんとうのさいわい」を探し続けるためには、ひとりでも生きていかなければなあと思う。