プリンセスチュチュを一話だけ見た

子ども向けのアニメというものは、本来的には親が子供に見せたくなるようなもの、すなわち親の心を掴むようなものであるはずです。つまり子ども向けアニメこそ、子供だましではいけないのです。その意味でプリンセスチュチュというアニメは、真に子ども向けのアニメです。面白い!
http://d.hatena.ne.jp/hajic/20070824/p4

とかなんとかってid:hajicさんが言っておられるので、別に見てあげてもいいわよバレエ絡んでるしっ、というわけで見ました。一話だけ。いやぁ、素直に面白いですわこれ。バレエ的に見ても楽しい。ということで一話を見た上での薀蓄語り。
主人公あひるのテーマ曲は「くるみ割り人形」の序曲。イメージとしてはホワイトクリスマス。はなやかなパーティーが始まる前の、ツリーを飾りつけながら招待客を待つ感じ。クリスマスに絞らなくても、何かが始まりそうな予感というか、そういう。あひるはバレエ苦手なのかな。チュチュはすごく巧い。
で、チュチュ。テーマ曲は同じく「くるみ割り人形」第二幕の花のワルツ。王子に連れられてお菓子の国に来たクララをもてなすワルツ。ケーキのデコレーションクリームのイメージ。花びらが舌の上でとろけるような。かわいらしい群舞。花びら舞います舞います。チュチュの衣裳は「白鳥の湖」の白鳥のそれ。ほんとの舞台衣装でも髪に羽をつけて地毛の色を隠すんだけど、白鳥やるときにしかやらないので、絶対白鳥。あひるとの対比?
みゅうと。ふぁきあ。この二人は同時に考える。みゅうとのテーマ曲も「くるみ割り人形」の金平糖の踊り。超有名な曲。演出によってはクララが踊ったりすることもあるけれど、別のバレリーナが扮してやることが多いです。クララの「大人のおねいさん」という憧れの対象? というのは置いといて、男の子のみゅうとがこの曲を背負って出てくるのには何かしらあると思います。みゅうとのバレエの所作は繊細。ふぁきあの曲は第一話では出てこなかったっけ。wikipedia見ても知らない曲。オペラらしいけど。
引っかかったのがこの男の子二人の描写のされ方で、ぼーっとした感じのみゅうとをふぁきあが過保護ってる感じに見えるんだけど、私は「白鳥の湖」のオデットと悪魔ロットバルトの関係を思い出した。髪の色からも。みゅうとは白で、ふぁきあは黒。愛玩してるのかいじめてるのかよくわからんところも、なんとなく。「俺の借りてきた本以外は読むな」って。どんだけ。
謎の老人ドロッセルマイヤー。「くるみ割り人形」に出てくる人物で、クララの名付け親でもあり彼女にくるみ割り人形を渡した人だったりする。魔法使いのような描写をする演出もままある。クララを夢の世界にいざなったり、王子とクララの先導役をドロッセルマイヤーの人形たちが担っていたり。彼の話す「王子と鴉」も「白鳥の湖」を彷彿とさせる。悪魔ロットバルトの衣裳には黒い羽が用いられていることが多い。顔の造形はくるみ割り人形っぽいです。
第一話の副題は「Der Nußknacker: Blumenwalzer」――「くるみ割り人形」花のワルツ。もうそのまんま、チュチュの登場を表してる。しかしなぜにドイツ語。特に意図はないか。
次回予告のBGMは「白鳥の湖」第四幕のクライマックス。王子に裏切られたオデットが他の娘と共に「もう人間に戻れない」と嘆く場面。ここめちゃくちゃ悲しいところです。二話にしてクライマックス? まさかなあ。